2009年12月26日

今週の一本(2009/12/20~12/26)―『空中ブランコ』第11話

今回伊良部の治療を受けることになる人物は、自分が精神的に病んでいることを自覚していない医師・津田英雄でした。
彼は、子供の教育を母親にまかせ、仕事が忙しいことを理由に家庭を顧みない人。
その「異常」さを敏感に感じ取った息子の雄太(第6話「フレンズ」の患者)は、他者とのつながりを求めてケータイ中毒になり、それに一人で対応しなければならない母親も精神を病んでいくことになります。
津田英雄の家庭は崩壊に向かって突き進んでいました。

ある日廊下で津田英雄とすれ違った伊良部は、瞬時に彼の異常を感じ取ったようです。
伊良部は、息子のケータイ中毒について相談するために診察室を訪れた彼の回復に力を貸すことになります。


ということで、今回は最終回。
最終回にしていくつかはっきりしたことがあります。
それは、伊良部がただの変態じゃなくて、精神科医として一番大切なことをしっかり自覚している名医だったこと。
なんと彼は伊良部総合病院の副理事だったということもわかりましたが、それは些細なことです(^^;
さらに、これまでのエピソードで毎回意味ありげに飛び回っていたカナリアの正体についても明かされました。

ラスト近くで伊良部(あるいは津田英雄の無意識下の心)は、津田英雄に次のように話しかけます。
「あなたは気が付かなきゃいけないね
周りにいるすべてのカナリアの声にね
カナリアは、周りがちょっとおかしくなったときに真っ先に知らせてくれる英雄なんだ
だからこそ気が付かなきゃいけないんだよね
僕ら
みんなね」

もちろんこのカナリアは実体として存在するわけではなく、患者が病んでいることを示すメタファーの一種です。
伊良部はこのカナリアの存在を敏感に感じ取ることができるようです。
患者にビタミン剤を注射する行為も、もしかするとこのカナリアが死なないようにするために必要だからなのかもしれません。
本当にビタミン剤だったかどうかはかなり怪しいですが(^^;

津田英雄が診察室にやってきたとき、伊良部はこう言います。
「こういう患者じゃない普通の人が一番厄介なんだよね」
これまでは、診察室に患者が入ってきたときにカナリアが飛び回っていましたが、津田英雄が入ってきたときは飛んでいませんでした。
その代わり、ところどころでカナリアの鳴き声だけが聞こえます。
津田英雄にとってのカナリアは息子の雄太だったようなので、この鳴き声は遠くにいる雄太の心の叫びだったのかもしれません。
伊良部が言う普通の人とは、彼のように症状を自覚していない(カナリアを伴わない)人のことで、そのために自分の症状に気付かせることから始めなければならないから厄介だと言っているのでしょうか。
津田英雄の症状は悪化の一途を辿っていましたが、最後の最後にカナリアの声に気付くことができました。
これにより、雄太も完全に回復することができ、津田英雄の家庭の崩壊も避けられました。

蛇足ですが、今回のエピソードは、星山純一(第3話「恋愛小説家」の患者)が家族の崩壊と再生をテーマに書いた『あした』という本のストーリーに繋がるのかもしれません。


今回で『空中ブランコ』は最終回ですが、終わってみれば最初の印象と180度違うなかなか良い作品でした。

最後に、各キャラの動きを時系列にまとめてみました。
キャストの下に書いたので、興味のある方はこの下にある[脚本・キャストなど >>]をクリックしてみてください(むちゃくちゃ長いです)。

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2009年12月20日

今週の一本 その2(2009/12/13~12/19)―『空中ブランコ』第10話

戦後の荒廃からの復興と人々の活気を身をもって感じることで、自分もまたこの国の発展に寄与したいという想いを強く抱き、今なおその意志を持ち続けている権力者。田辺満雄。
彼は死を恐れています。
死を恐れるのは人として普通の反応ですが、権力を持たない人たちは仕事をリタイアして表舞台から消え、やがて死を迎えることを受け入れることができます。
でも田辺満雄は、強い目的意識を持つ権力者であるがゆえに、志半ばで死んでしまうことを無意識下で強く拒絶しています。

彼にとって一番の薬は今の仕事をリタイアすること。


今回は演出がなかなか良かったです。
これまでのエピソードと違って、今回はいきなり注射を打たれる場面から始まりました。
田辺満雄は注射を打たれてもなぜか動物の姿になりません。
ここで場面は注射を打たれる2日前に戻ります。

記者たちに囲まれた田辺満雄は、浴びせられるカメラのフラッシュを無意識下で天国の光と認識し、乗り込もうとした車の中の暗闇を棺桶に入ることと同一視して、パニックを起こして倒れてしまいます。
これまで表に出ることがなかった症状が顕在化してしまいました。
この一連のシーンの彼はなぜか顔の一部や後姿しか描写されないのですが、口や目のアップでは、アバンの若々しい姿とは異なりなぜか小じわが目立ちます。
本編がさらに進むと、彼が戦後を体験してきたようなシーンがフラッシュバックで挿入されて、若々しい姿とのギャップがさらに強調されることに。。。

その謎はすべて12/23の夜、彼がふと訪れた球場で明らかになるのですが、このシーンは感動で涙ぐんでしまうほど描き方が秀逸でした。

この感動のシーンに伊良部が文字通り“飛び込んで”きます。
坂東真一(第4話「ホットコーナー」の患者)が打ったホームランボールをキャッチするために(^^;
でも、この日、12/23の朝、彼は子供とキャッチボールをする坂東に重要なアドバイスをしています。
坂東はその言葉で立ち直り、その日の夜の試合でホームランを打ったということです。
(第4話では伊良部のアドバイスを受けて何かをつかんだ坂東の顔のアップの後に12/24に飛んでしまいましたが、どうやら彼は12/23に完全復活していたようです。)
感動のシーンを笑いに変えてしまったとはいえ、これはある意味、伊良部へのご褒美といったところでしょうか(^^;


最後に、ちょっと気になったことを。
田辺満雄は12/19に池山達郎(第5話「義父のアレ」の患者)からの紹介で伊良部の診察室を訪れますが、このとき伊良部は、池山のことを自分の患者だと言っていました。
池山が初めて伊良部の診察室を訪れたのは12/21のはずなのでちょっと不思議です。
伊良部の中では、池山と同窓会で話したときに彼が間違いなく自分の患者になることが分かっていたのかもしれません。

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2009年11月14日

今週の一本(2009/11/8~11/14)―『空中ブランコ』第5話

この作品は、他の作品と比べて画面作りがかなり個性的です。
人物の描き方(絵的な意味で)も背景も独自路線を突っ走っているので、第1話を観たときはけっこう抵抗がありました。
でも、慣れとは恐ろしいもので、今では普通に楽しめています(^^;
ストーリー的には、精神的に大きな悩みを抱えた患者が伊良部先生の治療を受けて回復するまでの流れを淡々と追っていくだけですが、この単純な流れが逆に斬新な映像にマッチしているのではないでしょうか。
毎回ハッピーエンドで、思わずニヤけてしまう清々しい終わり方なのもいいです。


今回、第5話は、医学部長の娘と結婚した精神科医・池山達郎の悩みを解決する話でした。
妻の仁美は親(医学部長夫婦)と同居しているので、達郎も彼らと共に一つ屋根の下で暮らしていますが、これが達郎の精神に良くありませんでした。
彼らは悪い人ではないのですが(というかどちらかといえば善人のようです)、いわゆるハイソ(死語?)な人たちなので、彼らとの生活はこれまでの達郎の生活とは相容れません。
達郎は次第に自分自身を抑圧して本来の自分とは違う行動を取るようになってしまいます。
そんなある日、彼は同窓会で伊良部と再会します。
伊良部は達郎の症状を見抜いて治療を勧め、達郎は不本意ながらも伊良部の治療を受けることに。
最終的に、医学部長の「アレ」のおかげで、これまでの窮屈な想いをふっきることに成功し、妻とも自然な接し方ができるようになりました。
プロットとしてはありふれていますが、最初に書いたように、独特の映像とマッチしてついつい見入ってしまういいエピソードでした。


ということで、なかなか面白くなってきたので、これまでのエピソードのポイントをまとめてみました。

話数スタート初診回復症状イメージゴミ箱の注射器
112/17
(12/16の回想から)
12/1712/24睡眠障害、全般性不安障害ペンギン1本
212/1712/1712/24陰茎強直症サイ2本
312/1712/1712/24強迫神経症(心因性嘔吐症)ニワトリ(鶏)4本
412/1712/1912/24イップス6本
512/1712/2112/24強迫神経症カメレオン6本


各患者は、治療の一環としてビタミン剤を注射された後に、それぞれの精神状態を象徴する動物として描写されるようになります。
第1話のペンギン(飛べない鳥)は、萎縮してうまく飛ぶことができない空中ブランコ乗りそのもの。
第2話のサイは、別れた妻のことを自分の思い込みだけで恨んでいた男の孤独を表しているのでしょう。サイは単独行動をとる動物なので、それにダブらせているのでしょうか。最終的に妻の考えを受け入れることができた男は、ラスト間際でサイの象徴ともいえる角が小さくなって、最後には人間の顔に戻りました。
第3話のニワトリ(鶏)は、この回のゲストキャラの本名に関係ありそうです。作家である彼の本名は鶏山で、最初の本は鶏山名義で執筆していました。今は恋愛小説を書いていますが、本当に書きたいものが書けた頃に戻りたいという想いがあるから、その象徴としてニワトリ(鶏)が使われているのかも。
第4話は赤い馬でした。赤い馬は争いを象徴するようなので、三塁手として目立ち始めた新人に嫉妬する男の心を表しているのでしょうか。
そして今回、第5話はカメレオン。ときには透明になってしまうくらい自分の色を見失っている男をうまく象徴していました。

あと、気になるのが注射器です。
毎回ビタミン剤を打った後にゴミ箱行きになり、ゴミ箱の中の注射器が1本ずつ増えていっています。
でも、3本目の注射を打った描写がまだありません。
しかもこの3本目は隠すように針しか見えていません。
おそらく今後のエピソードで描かれるのだと思いますが、時系列を変えてまで後に持って行く理由は何なのでしょうか?
第1話から見返すとあっと驚くような仕掛けが隠されていたりするのでしょうか?

最後に、伊良部先生です。
作中で、伊良部先生の外見は大・中・小の三形態で描かれています。
今のところこの描き方に一貫性があるようには思えないのですが、この理由も気になるところです。


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