2010年01月31日

今週の一本(2010/1/24~1/30)―『刀語』第1話

全12巻の原作小説を毎月1回・1時間で12ヶ月かけてアニメ化していくということだったので、かなり無理があるように思っていたのですが、第1話はなかなかうまくまとまっていました。
本土から来たキャラのセリフが多めでしたが、長い間孤島で暮らしてきた姉弟と、雑多な人たちの中でもまれてきたであろう本土キャラの違いをうまく出せていたと思います。
そんなキャラたちの間で交わされる、軽妙なセリフ回しも楽しかったです。
「虚刀流(きょとうりゅう)七代目当主、鑢七花(やすり しちか)――押して参る!」から始まる終盤の盛り上げも素晴らしくて、けっこうツボにはまりました。

本編は、自称・奇策士のとがめが、父親の無念を晴らすために、かつて四季崎(しきざき)という刀鍛冶が打った変体刀(へんたいとう)を集めるための仲間を求めて、ある孤島にやってくるところから始まります。

四季崎は戦国時代の人だそうです。
彼は1000本の刀を打って全国にばら撒きました。
そのうちの988本は習作で、本当に価値があるのは残りの12本。
鉋(かんな)、鈍(なまくら)、金殺(つるぎ)、針(はり)、鎧(よろい)、鎚(かなづち)、鐚(びた)、釵(かんざし)、鋸(のこぎり)、銓(はかり)、鍍(めっき)、銃(じゅう)。
とがめが集めようとしているのがこの12本です。

とがめは、金で動く人間にも名誉で動く人間にも裏切られた末に、虚刀流の剣士を求めて孤島にやってきました。
虚刀流の剣士は刀を使わないので、四季崎の刀を所有することを名誉と思うことはなく、金で動くこともないから。
孤島で暮らしていたのは、虚刀流七代目当主の鑢七花と、彼の姉の七実(ななみ)でした。

七花は面倒がって協力を拒みます。
そこでとがめは、七花に協力してもらうため、とんでもないことを言い出します。
「鑢七花、私に惚れていいぞ」
愛で動く人間は信用できる(という裏付けがあるのかどうか定かではない理由)から、無理やり恋愛感情を芽生えさせて協力させるつもりのようです。
さすが奇策士(^^;

この突拍子もない発言に意表を突かれたのが真庭蝙蝠(まにわ こうもり)。
とがめを裏切った、金で動く忍者です。
彼は絶刀・鉋(ぜっとう・かんな)を手に入れた後にとがめを裏切って姿を消していましたが、残りの11本のありかを探るため、とがめの後を追ってきました。
とがめの発言に驚いた拍子に手裏剣を発射してしまい、七花の家を破壊してしまいます。
これに怒った七花が彼の後を追い、最初の対決が開始。

蝙蝠は奇人変人ぶりを見せ付けて七花を翻弄しますが、それをものともしない七花と真っ当に戦っても勝てないと思ったのか、一瞬の隙を突き、駆けつけたとがめをさらって撤退してしまいます。

その後、蝙蝠はとがめを大木に縛り付け、とがめに化けます。
姿形を変えて文字通り化ける様子はかなりグロテスク。

とがめに化けた蝙蝠は、とがめを捜している七花を発見します。
とがめの姿で油断させてひとおもいに倒してしまおうと駆け寄りますが。。。
いきなり七花のケリをくらってしまいました(^^;
七花はこれまで長い間姉以外の人と接することなく過ごしてきたため、他人の外見をとっさに識別できないようです。

ケリをくらった蝙蝠は、体内に隠していた鉋を思わず吐き出してしまい、七花に正体がバレてしまいました。
蝙蝠は七花がとがめに協力するのを阻止しようと、とがめについて語りだします。
とがめは自分の出世のために七花を利用しようとしているだけだと。
「初めて会ったとき俺はゾッとしたもんだぜ。この女の目に宿っていた野心にな」
さらに、とがめが、かつて七花の父親に倒された大乱の首謀者・飛騨鷹比等(ひだ たかひと)の娘だということも。

でも、七花にとって他人の出世などという世俗的なことはどうでもいいことでした。
また、とがめが飛騨鷹比等の娘だと知ったことで、金や名誉のためではなく、ただとがめのためだけに刀を集めようという意志を固めてしまいました。
父親の仇(の息子)に頼んででも刀を手に入れたいという熱意にうたれたのか、あるいは、理由はどうあれ、自分の父親が奪った命の償いをしたいと考えたのか。

ここで蝙蝠は、今度は七花に化けます。
七花の目の前で。
この「化ける」という行為は、化けた相手の外観そっくりになれるというだけではなく、その人の身体的能力も手に入れられるようです。
七花に化けた蝙蝠は、先ほど吐き出してしまった鉋を手に取り、刀のぶんだけ自分のほうが強くなったとすごみます。

それに対する七花は、とがめの秘密を知る人がほかにもいるのか確認。
蝙蝠は「こんなとびっきりの情報、簡単に漏らすかよ」

「じゃああんたをきっちり倒せばそれでいいんだな」
「虚刀流七代目当主、鑢七花――押して参る!」
全力全開、本気の七花が蝙蝠と対峙します。

蝙蝠は余裕しゃくしゃくで刀を振り下ろそうとしますが、なぜか手から刀がすっぽ抜けてしまいました。
虚刀流の人間は刀を使わないのではなく、剣術の才能がないために刀を使えないから(^^;
ということで、この対決は七花の圧勝で終了しました。

その後、七花は大木に縛り付けられているとがめを見つけて救出します。
七花が現れたとき、とがめの左目の描かれ方が変わりました。
まだ終わりじゃなかったと希望が持てたためでしょうか。
これを見た七花が一言。
「あいつが言ってたのはそういう目のことか。俺にはキラキラ光って、ずいぶんと綺麗に見えるけどな」

蝙蝠が言っていた、とがめの目に宿る野心というのがこの左目の十字表現だと思いますが、今回のエピソードではこのシーンを含めて合計7回、左目が十字になる箇所がありました。

(1)父親が虚刀流・六代目に倒される場面を目撃したとき
(2)鑢七花の腕前を試そうとして刀を抜いて向かっていくとき
(3)「私に惚れていいぞ」のとき
(4)鉋をへし折るという七花の言葉を聞いて慌てたとき
(5)大木に縛り付けられ、こんなところで死ななければならないのかと悔やんでいるとき
(6)縄が絡んで身動きできないところに七花が現れたとき
(7)七花の身を案じて「そなた自身を守れ」と言うとき

こうして見ると、野心を表すためだけではなく、おもわず素の心が表に出てしまったときにも、とがめの左目の表現が変わるようです。
十字形であることにも深い意味があるのかもしれません。


こうして七花はとがめに協力することになり、孤島を出て本土に向かうことになりました。
本土に向かう小舟の上で、とがめは七花に4つの指示を出します。

1つ目。
「刀は折るな」
了解。俺は刀を守ろう。

2つ目。
「私を守れ。四季崎の刀集めが目的といっても私が死んではなんにもならん」
了解。俺はあんたを守ろう。

3つ目。
「そなた自身を守れ。これはそなたをおもんばかって言っているわけではないぞ。四季崎の刀を12本集めるまで、死ぬことを許さぬ」
了解。俺は俺自身を守ろう。

そして4つ目。
「そなた自身を守れ。これはまあ、そなたをおもんばかって言っているわけだ。死ぬな。厳しい旅程にはなるが、決して死ぬな。できるな?できんとは言わさんぞ。早く了解と言え」
きわめて了解。


そしてラスト。
島に残った七実が一言つぶやきます。
「あの子あんなに弱いのに大丈夫かしら?」

この「あの子」というのが誰のことなのかはっきりしません。
七実は、これまで何度か七花のことを「あの子」と言っているので、七花のことだと考えるのが自然なような気もしますが、20年間もまじめに修行してきた七花が弱いとは思えません。
蝙蝠がおもわず発射してしまった手裏剣にいち早く気付いたのは七実なので、もしかすると七実の体が弱いというのは演技で、本当はものすごく強くて、自分と比べて七花が弱いから心配だという意味なのでしょうか?
それとも、「あの子」というのはとがめのことでしょうか?
とがめは「手裏剣がかすっただけで死ぬくらいひ弱」らしいので、七実はそのことを敏感に感じ取ったのかもしれません。
いずれにしても、なんだか意味深なセリフのように思えます。


ということで、これはセリフ回しで楽しませてくれる見ごたえのある作品になりそうです。
原作に書かれている要素をアニメ版にすべて詰め込むことはできないと思うので、うまく端折ってアニメ版だけで完結する(原作を読まなくても理解できる)展開になることを期待します。

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公式サイト
http://www.katanagatari.com/

刀語 第1話
絶刀・鉋(ぜっとう・かんな)

演出
元永慶太郎

脚本
上江洲誠

キャスト
鑢七花   細谷佳正
とがめ   田村ゆかり
鑢七実   中原麻衣
真庭蝙蝠  鈴木千尋
鑢六枝   大川透
飛騨鷹比等 川島得愛
船頭    相馬幸人
語り    池田昌子
ラベル:刀語
posted by animisc at 20:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 刀語 | 更新情報をチェックする
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