虚刀流の真実も明かされ、いよいよ終焉に向けて大詰めを迎えます。
収集対象は、10本目の変体刀、誠刀・銓(せいとう・はかり)です。
所有者は仙人の彼我木輪廻(ひがき りんね)。
舞台は奥州の百刑場。
何もない荒野ですが、ここにはかつて飛騨城があり、反乱鎮圧後に飛騨鷹比等らが処刑されました。
とがめにとっては、父が目の前で惨殺されたというつらい思い出がある場所です。
鷹比等を倒したのが七花の父・六枝だったということもあり、七花も心を締め付けられるような想いを抱いています。
否定姫の言葉でこの地を訪れた二人の目の前に、突然、一人の少女が現れます。
この少女が彼我木です。
彼我木はとがめたちが変体刀を求めてやってきたことを知り、その在りかをすぐに教えてくれました。
とがめが立っているまさにその場所の地下10丈(約30m)くらいの深さに自分が埋めたと。
そして、とがめ一人だけで掘り出すよう言って消えてしまいます。
とがめはその言葉に従って穴を掘り始めます。
普段なら奇策を練って彼我木と交渉するはずなのに。
七花がその理由を尋ねると、「会いたくない」からだという答えが返ってきました。
七花はとがめが穴を掘り続けるのを見守ることしかできません。
そんな七花の前に再び彼我木が現れます。
七花は、どうして誠刀・銓を埋めたのか尋ね、彼我木はそれに答えます。
邪魔なだけだったからだと。
かといって“友人”からもらったものを捨てるのも気が引けるので埋めることにしたようです。
彼我木は四季崎記紀本人から誠刀・銓を譲り受けました。
驚いた七花が彼我木に年齢を尋ねると、約300歳とのこと。
人間だったころを含めれば350歳になるそうです。
七花はさらに疑問を口にします。
彼我木の姿に見覚えがあるような気がすると。
「それはね、君がこの僕をそういうふうに見ているというだけなんだよ。
僕はね、君の記憶の投影なんだ」
彼我木には実態がなく、見る人によってその姿が違って見えるようです。
今の彼我木の姿は、凍空こなゆき、鑢七実、汽口慚愧、敦賀迷彩の4人の姿を融合したような外見になっているため、七花は見覚えがあるように感じたようです。
ではなぜその4人なのか。
七花は敦賀迷彩を除く3人に負けたことがあります。
敦賀迷彩には勝ったものの、その結果彼女の命を奪ってしまいました。
思い出したくない後悔と罪悪感が形となって表れたのでした。
これから数日の間、七花は、彼我木を通して思い出したくない記憶を覗き、否応なく苦手意識と向き合うことになります。
最初に直面するのが汽口慚愧の思い出です。
彼女が言った「剣を取ったほうが弱くなるなど、まるで呪いのようです」という言葉が引っかかっているようです。
次は鑢七実。
「刀が刀を使おうとするとこうなってしまう。刀に関する才能を一切持たない。それが虚刀流」
七花は、虚刀流の呪いとは、刀である自分が刀を使えないということなのではないかと考えます。
ここにきて七花は、1つ気になっていることを彼我木に尋ねます。
彼我木の姿がそれを見る者の記憶の投影であるなら、その人を食ったような性格は何なのかと。
七花にはこのような性格の人物についての記憶はありません。
彼我木によれば、それはとがめの記憶(苦手意識)とのこと。
とがめと七花が同時に彼我木を見たので、今の彼我木は二人の記憶が融合された状態になっているようです。
その夜。
七花は昼間の彼我木とのやりとりをとがめに伝えます。
とがめは、彼我木の性格が誰のものなのかを素直に教えてくれました。
その人物は飛騨鷹比等。
とがめの父です。
もったいぶったしゃべり方、ふざけた態度、砕けた態度、とがめに肉体労働を強いるという嫌がらせ。
彼我木の性格は、彼に瓜二つだそうです。
それがなぜとがめの苦手なものとして現れたのかというと。。。
とがめは父の存在自体を苦手に思っていたからでした。
とがめは父が今際の際(いまわのきわ)に言い残した言葉を忘れているそうで、その言葉を思い出すためには父の記憶と真剣に向き合う必要があるようです。
翌日。
七花は自分が後悔と罪悪感を抱えてまで戦う理由を知るため、彼我木と対戦することにします。
対戦前に、彼我木は自分が七花よりも弱いと断言します。
それでも七花が自分に勝つことは絶対にできないと宣言。
いざ対戦を開始すると、彼我木は逃げ回るだけです。
七花はそんな彼我木に違和感を感じます。
「変だ。今までのどの戦いとも違う。かみ合わねえんだ」
七花は、彼我木に戦う気がまったくないことに気付きました。
彼我木によれば、七花の戦闘能力を10とすれば、彼我木のそれは7。
まともにやりあえば戦いになりません。
でも、七花は10の力を攻撃と防御に半分ずつ使っているので、彼我木が戦闘能力をすべて防御に回せば七花は彼我木を打ち破れません。
それがわかっているので、初めからまともに戦おうとしていませんでした。
七花は、これでは何も得られないと思い、戦いを放棄してしまいます。
ところが彼我木は、こんな戦いでも考え方ひとつで得るものがあると言います。
「戦いなど虚しい。勝ち負けにたいした意味などない」
そのことを教えたかったと。
彼我木はさらに言葉を続けます。
七花はとがめの目的を知ってそれに同調して戦っているのではなく、単に同情しているだけだと。
七花はとがめのことを好きだからとがめと行動を共にしていると反論しようとしますが、それより先に彼我木が言葉を続けます。
七花の気持ちは恋でも愛でもないし、とがめの目的がなんであれ、それがとがめ自身や他人を犠牲にしなければならないものではないことは確かだと。
にもかかわらず、とがめと七花は刀集めの旅で何人もの人の命を奪っている。
とがめと七花には、その事実を受け入れる覚悟が足りないと言い放ちました。
「銓ってのは天秤って意味だ。君は自分のやっていることがどれほどの何と釣り合うのか考えてみることだ」
彼我木はこのことをとがめにも伝えておくよう言います。
七花は、次の休憩時間に伝えると答えますが、彼我木はその休憩時間がまさに今であることを口にします。
「だったらそれは今だ。とがめちゃん穴の中で力尽きちゃって休憩中みたいだからさ」
それを聞いた七花は急いでとがめのもとへ向かいました。
でもその途中、七花は彼我木の作り出す幻影の中へ。
そして、こなゆきとの戦いで自分が自らの体を犠牲にして戦う姿を見、敦賀迷彩からの問いかけという形で他人の命を犠牲にしてまで戦う理由を考えさせられます。
そして七花はついに結論にたどり着きました。
自分が戦う理由。
それはとがめのためだということに。
「そうだ、俺はとがめのために戦っているんだ。とがめと出会ったその日から、俺は―――。恋とか愛なんてくだらねえ。俺はとがめだから戦っている。とがめでなければ戦ってこなかったってことだ。わかったか彼我木輪廻!」
七花は、彼我木の作り出す幻影を打ち破りとがめのもとへ向かいました。
穴の底で気絶していたとがめは、七花の呼びかけで意識を取り戻します。
彼我木が最初から戦いを放棄していたので勝負にならなかったと言う七花の話を聞いたとがめは、彼我木のやり方には大きな穴があると即座に看破します。
その穴を突けば勝てると言って、七花に答えを与えようとしますが、ここで何かに気付きました。
そして、七花に答えを与えずに再び穴掘りの作業に戻ってしまいます。
その直後、柄(つか)と鍔(つば)を掘り当てます。
もしかしたら以前に見つけていたものの、刃がないのでそのまま放っておいたのかもしれません。
とがめは、この柄と鍔だけの刃のない代物が誠刀・銓だということに気付きました。
それと同時に、父の今際の際の言葉を思い出します。
父は鑢六枝に倒される直前にとがめを抱きしめてこう言ってくれました。
「僕は君のことが大好きだった」
ずっと苦手だった父の本心からの言葉を思い出したとがめは、心の中で父との折り合いをつけることができたようです。
その後、とがめは、苦手だと言って会おうとしなかった彼我木に会いに行き、自分がたどりついた結論を伝えます。
「誠刀・銓とは、己自身を測る刀。
人を斬る刀ではなく、己を斬る刀。
己を試す刀。
己を知る刀。
だから刃無き刀。
無刀ということだ」
刀の本体は刃だが、それがないのであれば刃を守る鞘はいらない。
決意を持って己自身と向き合える柄と鍔だけがあればいいということなのだろうと。
最後にとがめは、彼我木に尋ねます。
四季崎記紀とはどのような人物だったのかを。
彼我木は答えます。
四季崎記紀は彼我木に己の深淵を見て、苦手意識を引きずったまま去って行った、否定的なやつだったと。
その際、四季崎記紀は、彼我木に誠刀・銓を預けていきました。
彼我木は変体刀に毒されるのが嫌だったのでそれをすぐに埋めたそうです。
つまり、飛騨城が存在する前から誠刀・銓はそこに埋まっていました。
だからとがめの父・飛騨鷹比等は、歴史のゆがみに気付き、それを正すために謀反を起こしました。
誠刀・銓の毒に侵されてしまったために、間違いを正さざるをえなくなってしまったようです。
ここまでわかったところで、彼我木の口から驚きの言葉が伝えられます。
「そのあたりになってくると四季崎記紀の変体刀作りもだいぶ完了に近づいたって感じだね」
これまでとがめは、988本の習作を経て作られた12本の完成形変体刀が四季崎記紀が完成させた究極の刀だと思っていましたが、事実は違いました。
四季崎記紀はこの12本の変体刀を習作として、さらに究極の刀を作り出していました。
それこそが、完了形変体刀、虚刀・鑢(きょとう やすり)です。
自らの体を刀とする虚刀流です。
かつて錆白兵が散り際に「虚刀流が四季崎記紀の遺品」だと言い残した意味がこれで明らかになりました。
彼はまた、自分が失敗作だとも言い残しています。
彼の家系も四季崎記紀によって生み出された“刀”だったようです。
ただし四季崎記紀は、“刀”が刀を使うと最強になれないことに気付いて、最終的に虚刀・鑢に行きついたのでしょう。
とがめは今回の件で、目的のためには引き分けという不完全燃焼でさえ飲み込まねばならないこともあると学びました。
そのことを彼我木にも伝えますが、彼我木はこれを即座に否定します。
目的のために目的も捨てねばならないこともある、というのが正解だと。
野望も野心も復讐心も、真の目的のためには捨てるべき目的なのだと。
とがめはこの考えを受け入れることを拒否します。
彼我木はあきれながらもその考えを否定しません。
それがとがめの生き方ならその考えを貫き通せばいいと言うだけです。
とがめは最終的に、この考えに引きずられる形で、最後の最後で悲惨な運命をたどることになるのかもしれません。
最後に否定姫です。
彼女は今回、自分が四季崎記紀の末裔であるかのような言葉を口にしました。
でも、それに対する右衛門左衛門の言葉では、否定姫が彼我木に誠刀・銓を託したことになっています。
さらに、否定姫は四季崎記紀の末孫(ばっそん)などではないとも。
これはつまり、否定姫=四季崎記紀ということなのでしょうか?
そういえば、今回の鳳凰の話では右衛門左衛門はすでに死んでいることになっていました。
否定姫=四季崎記紀という超自然的な話が成り立つのであれば、右衛門左衛門は否定姫の力で再生されたということも考えられますが。。。
いろいろと伏線が張り巡らされているので妄想が尽きません(^^;
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刀語 第10話
誠刀・銓(せいとう・はかり)
演出
元永慶太郎
小林公二(演出助手)
脚本
長津晴子
キャスト
鑢七花 細谷佳正
とがめ 田村ゆかり
否定姫 戸松遥
左右田右衛門左衛門 小山力也
彼我木輪廻 伊東みやこ
真庭鳳凰 置鮎龍太郎
真庭人鳥 広橋涼
鑢七実 中原麻衣
汽口慚愧 伊藤静
敦賀迷彩 湯屋敦子
凍空こなゆき 日高里菜
飛騨鷹比等 川島得愛
武士 倉持竜也
武士 佐々木啓夫
語り 池田昌子
ラベル:刀語