2012年07月23日

今週の一本(2012/7/22~7/28)―『TARI TARI』第4話

今回は、コンドルクインズとの出会いとWORLD MUSIC FESTIVALの開始という2つのイベントを通じて、物語の(そして合唱部の)キーパーソンとしての和奏の位置づけがより鮮明になってきました。
もう何度も書いていることですが、今回も台詞回しが実にうまかったです。
さらにキャラの掘り下げが無理なく徐々に進んでいく心地よさ。

また、オーディションの邪魔(伴奏)をしたのがコンドルクインズだと知った来夏が、オーディションの負けを自ら認めてしまったうえ、WORLD MUSIC FESTIVALに出場してくれるようコンドルクインズに頼んでしまったことから、紗羽との関係がぎくしゃくすることにもなりました。
「だって勝てるわけないもん」とあっけらかんと話す来夏は、練習をおろそかにして、しまいには練習を休ませてほしいと言い出す始末です。
これにはさすがの紗羽も怒ってしまいました。
「あたしたちまだ何もできてないじゃん。これ遊びだったの?あたし、尊敬してるすごい騎手が相手でも、一緒に走るんなら絶対負けたくない。来夏は自分で歌わなきゃ!」
来夏の夢の実現に協力するために合唱部員となった紗羽の本気の怒りです。
第1話で来夏が声楽部をやめたことを知ったときも、第3話で教頭が部活動申請書を捨ててしまったときに来夏のために抗議しようと前に出たときも、紗羽は来夏のために動いています。
今回の怒りも、このままでは来夏が後悔してしまうことをわかっているので、そうならないように来夏に活を入れたということでしょう。

一方、来夏も紗羽が理不尽な怒りをぶつけたのではないことは気づいているはずです。
その後、自分なりに一生懸命考えた末、別のステージを見つけようとがんばりました。
この過程でさりげない助言を与えるコンドルクインズの描写も良かったです。
コンドルクインズ陽気、コンドルクインズ小柄、コンドルクインズ外国の3人の性格付けがしっかりできているせいもあって、それぞれの言葉づかいにかかわらず、その裏に込められた優しさが自然に伝わってきました。
これまでの登場回数はそれほど多くないのにすんなりと受け入れられる人物描写は、本当に「うまい」の一言です。

さらに、来夏たちのために裏でステージを確保してくれていた和奏の行動も、彼女の性格をうまく表していました。
来夏と和奏が2人で会話するシーンで「来夏でいいよ」と視線を合わせずにさりげなく言う(言ったつもり)の来夏と、視線を合わせてはっきりと「和奏でいいよ」と返す和奏のやり取りも素晴らしかったです。



さて、これ以外の本編でのやり取りで印象的だったものをいくつかあげてみると。。。

「心の旋律」と似ているコンドルクインズの曲「Amigo! Amigo!」が生まれた経緯が明かされました。
コンドルクインズが路上ライブしているときにまひると出会い、彼女と一緒に作ったそうです。
まひるとの時間を過ごすうちに「作った」というより「生まれた」という感じで自然に出来上がった、コンドルクインズ唯一のヒット曲だとか。
まひるは特別な友人で恩人で、たぶん恋していたという話も聞けました。
まひるの存在の大きさが改めて浮き彫りになり、これを聞いた和奏の悩みも深まったようです。
どうでもいいことですが、「僕たちは君のパパやないよ」と品のないジョークを飛ばすコンドルクインズ外国の言葉に反応して照れる和奏がかわいかったです。

そういえば、コンドルクインズ外国が和奏を連れて来たときの言葉「見つけたよ、まひるの娘さん!」に反応して紗羽の母・志保が振り返ったのが気になりました。
年代的には志保はまひると同期でしょうから、彼女も合唱部だったのでしょうか?

それと、コンドルクインズ外国が日本語を話せることも判明。
ただし興奮しすぎると母国語になるという弱点(?)がストーカー騒ぎの原因だったことがわかりました(^^;
ウィーンの活躍もあり、和奏とやっとコミュニケーションが取れました。
一つ残念だったのは、「あの自転車を追ってください!」のところでタクシー運転手の声が聞けなかったことでしょうか。
ここはぜひとも一言欲しかったです。
もちろん中田譲治声で(CANAAN的に)。


そしてWORLD MUSIC FESTIVALが開始。
来夏たちは「Hau'oli♪」という曲で優勝を目指します。
ちなみにHau'oliとはハワイ語で「楽しい」「幸せ」「喜び」という意味のようです。
ところが、来夏たちのステージは海から遠いうえ、無名なためもあり、誰も聴きに来ません。
仕方ないのでいったん休憩してコンドルクインズのステージを見学することに。
コンドルクインズのステージは大賑わいでした。
ステージを放り出してここまでやってきた理由を聞いたコンドルクインズ小柄の「集まるから歌うんじゃない。歌って人を集めるんだろうが」という台詞がなにげに深いです。
コンドルクインズ陽気がアンコールでステージに立たせてやろうかという言葉をかけてくれましたが、来夏は自分たちのステージがあるからときっぱりと断ります。
紗羽に怒られる前の来夏なら喜んで飛びついていたのではないでしょうか。
そんなやり取りの後、歌う意欲を取り戻した合唱部一同は再びステージへ。

ここでコンドルクインズ陽気が和奏に話しかけます。
「音楽をやめたそうだね」
そしてまひるの言葉を伝えました。
「その健やかなる時も病める時も、喜びの時も悲しみの時も……私が作りたいのは、そんな曲かな」という生前の言葉。
まひるは生涯を共にしたいと思える“曲”を作りたかったということでしょう。
「その時は意味が分からず夢物語だと笑ってしまったけれど、それが君だったのかもしれないな」
これまた深い台詞。
生前のまひるが作りたいと言っていた“曲”とは娘・和奏そのものなのかもしれない。
まひるは人生そのものを音楽ととらえていたようです。
「昔まひるに言われたんだよ。音楽はやめられない」
そして、「君に持っていてほしい」と言って手紙を渡します。
和奏が生まれたときにまひるから届いた手紙だそうです。
コンドルクインズの話を聞き、さらに母が残した手紙を読んだ和奏は何を想うのか。
和奏はまだ名義貸しのみで合唱部のステージには参加せず、歌を歌うこともありません。
この手紙に何が書かれているのかは当然気になりますが、和奏がいつ歌うのかも気になるところです。


そういえば①
これまでアバンの意味はまったく気にしていませんでしたが、どうやら各キャラクターが現在打ち込んでいることに目覚めるきっかけが描かれているように思えます。
第2話の来夏はコンドルクインズの歌を通じて音楽の楽しさに目覚め、
第3話の大智は強い姉・晴香への憧れが転じて姉が好きなバドミントンを始め、
第4話の紗羽は幼少時の経験から乗馬の楽しさを知った、
というところでしょうか。

とすると第1話の和奏は母・まひると一緒にいられたときの思い出に生きているということになりそうです。
和奏が音楽から離れた理由には母の死以外にも複雑な事情があるのだろうと思っていましたが、歌うことで喜びを共有してくれる人(まひる)がもうこの世にいないからという意外と単純な1つの理由なのかもしれません。
根本原因となる人物がこの世に存在しないところが複雑と言えば複雑ですが。
第1話の「いまさら歌ったって……楽しめるわけない」はそういうことなのでしょう。
今回の出来事の結果、和奏がどのように変わっていくのか、そしてそれがどう描かれるのか。


そういえば②
今回の風呂担当はコンドルクインズ外国でした。
別作品ですが、かつて『ドルアーガの塔~the Aegis of URUK~』という作品には「風呂縛り」なるものがあって、毎回どのように風呂シーンを組み込むのか苦労したという話がありました。
この作品にもそのような縛りがあるのでしょうか?
別にどうでもいいことですが、次回の風呂担当が気になります(^^;

TARI TARI 2 [Blu-ray]
TARI TARI 2 [Blu-ray]
TARI TARI 2 [DVD]

公式サイト
http://taritari.jp/

TARI TARI 第4話
怒ったり 踊ったり

演出
許琮

脚本
橋本昌和

キャスト
坂井和奏       高垣彩陽
宮本来夏       瀬戸麻沙美
沖田紗羽       早見沙織
田中大智       島﨑信長
ウィーン       花江夏樹
コンドルクインズ陽気 青山穣
コンドルクインズ小柄 清川元夢
コンドルクインズ外国 ホルヘ・ディアス
坂井まひる      大原さやか
沖田正一       木下浩之
沖田志保       能登麻美子
多田先生       宮坂俊蔵
花谷秋夫       小形満
長岡         高橋良吉
来夏のじいちゃん   塾一久
子供A         藤田麻美
子供B         田頭里奈
ラベル:TARI TARI
posted by animisc at 20:43| Comment(0) | TrackBack(0) | TARI TARI | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック