田沼と多軌は2人とも妖怪が存在することを知っているので、夏目の言動の意味を理解して真剣に話を聞いてくれます。
でも夏目には他人から白い目で見られてきた嫌な思い出がたくさんあるため、そんな田沼と多軌にすら心を完全に許していませんでした。
それが今回、いつのまにか彼らを信頼して頼りにしている自分がいることに気付き、最後には過去の経験を打ち明けて共有するまでになります。
ということで本編。
突然の雨に降られた夏目と田沼が、立派な屋敷の軒先で雨宿りしていると、屋敷の中から奇妙な声が聞こえてきました。
夏目には妖怪の声に聞こえたので、急いでその場から立ち去ろうとします。
でも夏目たちが立ち去るよりも早く門が開かれます。
身構える夏目。
ところが、顔を出したのは多軌でした。
この屋敷は多軌の家でした。
しかも彼女の腕の中にはなぜかニャンコ先生までいます。
夏目が妖怪の声だと思ったのは、多軌にモフモフされて嫌がるニャンコ先生の悲鳴だったようです(^^;
その後、夏目と田沼は、雨宿りのお礼に蔵の掃除を手伝うことにします。
こういう屋敷には妖怪がいることが多いので、念のため夏目がニャンコ先生に確認すると、いろんな妖怪の気配が残っているものの、今のところ変な気配はないとのことでした。
蔵に入った夏目と田沼は、奇妙なものをたくさん目にします。
魔除けとして利用されていた巨大なこけし、お札、お面、書類、土偶、木製の糸巻に紐を通して作られた謎の物体、逆さまの状態で壁に貼られた絵などなど。
これらの品は、多軌の祖父が妖怪の研究をするために収集したもののようです。
多軌の家族は気味悪がって蔵に寄りつかないけれど、多軌は小さい頃に祖父から妖怪についていろいろ教えてもらったとか。
逆さまの絵が剥がれかかっていたので夏目が手を伸ばすと、絵は完全に剥がれてしまいました。
夏目がこの絵を改めてよく見てみると、どうやら河童が描かれているようです。
ここで、田沼が夏目を呼びにやってきました。
夏目は絵を置いて田沼と一緒に1階へ。
そこで2人は、異様に目立つ物体を目撃して驚きます。
夏目の目に入ってきた物は、まるで人が立っているかのように並べられている3枚の白い着物でした。
多軌によれば、これも魔除けのおまじないだとか。
その後、掃除が終わって蔵を出るときに、夏目は着物が1枚なくなっていることに気付きます。
多軌が片づけたのかと思って尋ねると、そうではないという答えが返ってきました。
不思議がる夏目に田沼は言います。
「さっきと同じで、2枚ちゃんとあるぞ」
この言葉に夏目は驚きますが、深く追求することなく蔵を後にします。
家に戻った3人は、多軌が作ってくれた焼きそばを食べてのんびり談笑。
先ほどの着物のことが頭から離れない夏目は、着物について多軌に尋ねようと口を開きます。
でも結局切り出せず、誤魔化すついでに席を立ってトイレへ行くことに。
着物がなくなったように思えたのは勘違いかもしれないし、たいしたことでもないのに余計なことを話して怖がらせることはないと、無理やり自分を納得させようとします。
そんな夏目を着物の妖怪が襲います。
夏目はなんとか追い払うことに成功しますが、今度は別の妖怪(メナシの妖怪)が現れ、その妖怪と目が合ってしまいました。
幸運なことに、こちらは悪い妖怪ではなさそうです。
多軌の祖父・慎一郎が生きていた頃はよく遊びに来ていたらしく、「久しぶりに遊びに来ただけ」と言っています。
夏目がこの妖怪に先ほどの着物の妖怪について尋ねてみると、蔵の掃除中に夏目が絵を剥がしたことが原因だとわかりました。
逆さまに貼られていたのは厄封じの術をかけるためだったようです。
慎一郎が資料を見て試してみた結果、それが偶然成功して、たちの悪い古い人形の妖怪(=着物の妖怪)が封じられていたようです。
古い人形の妖怪は、封じられたはずみで体がバラバラになり、体の断片が家中に飛び散ってしまいました。
そして今、蔵に封じられていた胴体と左手が、体の残りの部分を探して家中をうろついているようです。
今いる場所の床下に右足があると聞いた夏目は、本当かどうか確認するため外に飛び出します。
物音に気付いた田沼が部屋から廊下をうかがったとき、部屋の中に何かの匂いが流れ込んできました。
多軌はこの匂いに心当たりがある様子。
一方、外に出た夏目が縁の下を覗き込んでみると、確かに右足がありました。
でも夏目がどうこうする間もなく、古い人形の妖怪が持ち去ってしまいました。
そこに田沼と多軌が駆けつけます。
夏目は2人とともにいったん部屋に戻り、事情を打ち明けます。
とそのとき、2階から何かが這っていく音が聞こえてきました。
その音は夏目だけにしか聞こえません。
夏目はすぐに部屋を飛び出していきます。
そんな夏目を見て多軌がつぶやきます。
「夏目君て、確かに変な行動をしてるように見えるわね。でも、事情を知っていればわかる。夏目君は今、私たちやこの家を守るために走ってるって」
夏目は必死に妖怪を探します。
そんな夏目の肩にはメナシの妖怪が乗っています。
メナシの妖怪は、慎一郎に妖怪を見る能力がまったくなかったことや、慎一郎が妖怪について書かれた巻物や書物を楽しそうに読んでいたことなどを、嬉しそうに語ってくれました。
そんな慎一郎の様子が面白くて、仲間の妖怪たちと眺めていたことも。
そうこうするうちに田沼と多軌も2階にやってきました。
すると今度は天井裏から物音がします。
天井裏を覗いた夏目が目にしたのは左足でした。
古い人形の妖怪もちょうど左足を見つけたようで、ものすごい勢いで迫ってきます。
夏目は田沼をかばうことに精いっぱいで逃げることにまで頭が回りません。
間一髪のところを、下で待機していた多軌が助けてくれました。
3人はとりあえず庭に出て一息つきます。
そのとき、塀の上に新たな妖怪が二体現れました。
痩男の妖怪とタタラの妖怪です。
妙な妖気を感じたので久しぶりに様子を見に来たのだとか。
彼らもメナシの妖怪と同じく慎一郎のことが気に入っていたようです。
夏目はそんな妖怪たちの話に聞き入ります。
はたから見ていると、塀の上をじっと見つめているようにしか見えません。
田沼と多軌には妖怪は見えませんが、夏目の様子からそこに妖怪がいるのだと気付きました。
多軌は目を凝らしますが、やはり何も見えないので、どんな妖怪がいるのか夏目に尋ねます。
「多軌のおじいさんのことを知っている妖怪で、おじいさんのことけっこう好きだったみたいだよ」
それを聞いて喜ぶ多軌。
ところが夏目の肩に乗っていたメナシの妖怪は、夏目が勝手なことを言うので怒ってしまいました。
「慎一郎など、我々のただのおもちゃだったのだ」
その様子を見ていた塀の上の妖怪たちは、夏目が妖怪を見ることができるとわかり、目が合った縁に免じて一つ忠告を与えます。
古い人形の妖怪の名前はカクラといい、すでに両足と左手を取り戻していると。
右手は朽ちてなくなってしまったので、残りは頭だけ。
その頭は裏庭にあると教えてくれました。
3人はさっそく裏庭へ向かいます。
その途中、田沼が夏目に言います。
夏目がまた一人でなんとかしようとして、自分たちはのけ者にされるんじゃないかと思っていたと。
夏目は、自分の話を聞いてくれる友達がそばにいてくれることに安心感を覚えているようです。
そのとき突然、夏目を古い人形の妖怪が襲います。
田沼と多軌が気付いたときはすでに遅く、夏目は靴だけを残して消えていました。
慌てて家中を探す田沼と多軌。
でもこの2人に見えない相手を探す方法などわかりません。
そんなとき多軌が陣のことを思い出しました。
夏目と話していた妖怪がその陣の中に入ってくれれば力を借りられるかもしれないと考え、陣を探しに走ります。
多軌はすぐに陣が書かれた紙を見つけます。
でも、以前に妖怪を見たことが原因で命を奪われかけたことを思い出してしまいます。
多軌は一瞬躊躇いを見せますが、妖怪たちが祖父のことを好きだったようだという夏目の言葉を信じて、妖怪に助けを求める決意を固めます。
でも必死になって妖怪に呼びかけても、まったく反応がありません。
そこにニャンコ先生が登場。
夏目の帰りが遅いので様子を見に来てくれました。
心強い味方が来てくれたので、田沼と多軌は裏庭へ向かいます。
ところがニャンコ先生は一点を見つめたまましばらく動こうとしません。
「なぜ陣に入らなかった?」
部屋の中には塀の上にいた妖怪たちが揃っていました。
「そんな義理はない」
「人間とかかわるとろくなことはない」
妖怪たちは口々に答えます。
それを聞いたニャンコ先生は無言で部屋を後にしました。
ここの無言の間が絶妙。
他の妖怪に対するニャンコ先生の思いも微妙に変化してきているのかもしれません。
その頃、裏庭では夏目が気絶していました。
そんな夏目にメナシの妖怪が呼びかけます。
早く起きないと右腕を切られると。
その声で意識を取り戻した夏目の目に映ったのは、ナタを持って夏目に襲い掛かるカクラでした。
カクラの頭は裏庭の灯篭に引っかかっていますが、片手では抜き取れないので夏目の右腕を奪おうとしています。
絶体絶命の夏目を救ってくれたのはニャンコ先生です。
ニャンコ先生は斑の姿になってカクラを倒そうとします。
ところが、いたるところに中途半端な結界が張られているので思うように動けません。
どうやらこの結界は、慎一郎が見よう見まねで張りまくったもののようです。
ニャンコ先生は逃げ回るカクラを捉えることができません。
ここで、じれったくて見ていられなくなった妖怪たちが加勢してくれます。
これまでに登場した妖怪たち以外にもたくさんいます。
妖怪たちはカクラの動きを抑えることに成功し、ニャンコ先生が最後の一撃。
カクラに喰らいつきました。
するとまばゆいばかりの光が溢れだし、カクラを抑えつけていた妖怪たちの記憶が夏目の中に流れ込んできました。
病に倒れた慎一郎を見守る妖怪たち。
彼らは医者が聴診器で診断していた様子を思い出し、同じようにすれば慎一郎の病気を治せると考えました。
紐と糸巻で聴診器のようなものを作って慎一郎を“治療”しようとします。
慎一郎が回復するように願って“聴診器”をあてる妖怪たち。
夏目が蔵で見つけたおもちゃのようなものは、妖怪たちが作った“聴診器”だったようです。
もちろんこれで病気が治るわけもなく、やがて慎一郎は亡くなりました。
幼い多軌が悲しんで泣きじゃくっています。
その泣き声に混じって、たくさんの泣き声が。
慎一郎の死を悲しむ妖怪たちの泣き声です。
記憶の流入が止まり意識を取り戻した夏目がふと気づくと、妖怪たちが塀の上から夏目を見ていました。
今回もいろいろ嫌みなことを言っていますが、夏目のことを心配してくれているようです。
夏目の様子からそこに妖怪たちがいることがわかった多軌が妖怪たちに語りかけます。
「おじいちゃんに会いに来てくれてありがとう」
その言葉を聞いた妖怪たちはまんざらでもない様子です。
そのとき多軌の背後からメナシの妖怪の声が聞こえてきました。
「さらば慎一郎の孫。元気で――」
その言葉は多軌にも聞こえました。
メナシの妖怪は多軌に聞こえるように陣に入って話してくれました。
でも、多軌が慌てて振り向いたときにはすでに姿はありません。
何かの花のようなやさしい匂いだけを残して去ってしまいました。
このとき多軌はやっと思い出しました。
おじいちゃんが亡くなって泣きじゃくった時にも同じ匂いがしていたことに。
一件落着。
家に戻る夏目たち。
その途中、多軌が夏目に語りかけます。
「見えるっていうのは、出会ってしまうっていうことでもあるのね。ねえ、よかったら聞かせてくれない?夏目君が出会ってきた妖怪たちのこと」
そう言いながら、多軌は田沼とともに夏目をやさしい目で見ています。
これまで他人からこのような言葉をかけられたことがない夏目は戸惑ってしまいますが、すぐに答えます。
「うん」
夏目はこれまで、妖怪が見えるという話をするたびに嘘つき呼ばわりされ、やがては居場所を失い親類の家をたらいまわしにされていました。
でも今は、自分のことを受け入れてくれて、話を聞かせてほしいと言ってくれる友達がいます。
秘め事のようで重かった過去の出来事の数々を話せる相手がすぐそばにいてくれることに気付きました。
きっとこの後、夜遅くまでいろいろなことを話したのではないでしょうか。
気を許せる友人がいるんだということに夏目が気付いたという点で、今回は物語上の大きな節目となるエピソードだったと思います。
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ラベル:夏目友人帳 参 「夏目友人帳」シリーズ