収録時間は約16分。
内容は板野監督へのインタビューと、板野監督によるシーン解説です。
最後のほうで「総集編を観ていただいてありがとうございます」と言っているので、もしかすると、本編第11話と第12話の間に放送された「ブラナビ」の後半の映像なのかもしれません。
tvkでは放送されませんでしたが、ほかの放送局では放送されたのでしょうか?
第12話のグランドエンディングのノンクレジットバージョンが入っていないのはどういうことだ!・・・という不満はさておき、さっそく特典映像の内容のほうを。
板野監督インタビュー
・ブラスレイターを制作する経緯
自分は見ていませんが、GONZOの「青の6号」という作品で3DCGが使われていたそうです。
一部のアニメファンからは批判されたそうですが、板野監督としては、前衛的でジャパニメーションの方向性が示されているように思えたそうです。
それがあったので、バイク物のアニメの監督を依頼されたときに、自分の色を出しながら思い切ってやりたいと考えて制作が始まったとのこと。
・板野サーカスの表現力
絵コンテにこだわらないで、そこから膨らませて映像を作っていくのが基本だそうです。
絵コンテが外部に漏れても、外部では再現できないような映像を作るのが板野スタイル。
第1話で発射したミサイルは2発だけでしたが、スタッフはもっと派手にやりたがっていたとのこと。
ミサイルの軌道の美しさは数が少なくても成立するので、「厚化粧をした化粧でごまかさないで素で頑張れ」という考えから、監督としては1発にしたかったそうです。
そうすることで、まずは基本を覚えてほしかった。
2発というのは板野監督が妥協した結果でした。
シーンガイド
・第3話、ミサイルに追撃されるジョセフ
3D制作者はすべて3Dでやりたがる傾向があるそうです。
ところが、3Dで空を作ってしまうと、遠距離にある空は画面では動かなくなってしまい、スピード感が出ません。
このシーンでも、ジョセフがミサイルを避けているのではなく、カメラが行ったり来たりしているだけに見えてしまいます。
そこで、空を1枚の背景として描いて、カメラの動きに合わせて流すように動かし、その流れにあわせてミサイルの煙を微調整していくと、スピード感が出るそうです。
このことは比較画面を見ると一目瞭然で、臨場感がまったく違います。
リアルを追求しても面白いものが出来るとは限らないんですね。
制作前に3Dで作ってもダメだという話をしたそうですが、最初はわかってもらえず、3Dで作られてしまったそうです。
「箱庭の中に素材が全部入っていて、その中で何もかもやろうとしてしまうっていうのが3Dクリエイターの弱点」。
箱を取り払うことで3Dだけでは作れないものが作れる、というのが板野監督の考え方。
・第5話、ゲルトとジルの闘い
このシーンではカメラがぐるぐる回って、とても激しい動きになっています。
ゲルトが走っているときに火花が飛び散りますが、映像では何が起こっているのか見えません。
でも、1カットだけスローでジルの弾丸をはじくところを見せることで、これまでの火花もジルが撃った弾丸をゲルトが叩き落しているんだと解釈できるはず。
また、カメラを寝かせることでゲルトの全身を見せたり、背景の奥行きを表現できるという狙いもあるそうです。
こういうシーンの制作を通じて、3D制作者がレイアウト込みで画を描けるようになってきて、絵は描いていないけれどアニメーターと同じ能力を育むことができたそうです。
・第6話、ゲルトとヘルマンの峠でのレース
ゲルトはプロのレーサーなので、グリップの限界値を考えてぎりぎりのブレーキングでコーナーを攻めているように描かれています。
一方、交通機動隊からXATに来たヘルマンは、普段は道なき道を走ってデモニアックを追っているので、コーナーでブレーキをかけず、逆に加速して土手を駆け上ってゲルトを抜いています。
ヘルマンはゲルトに自分の成長した姿を見せようとしたのですが、この行為がゲルトの危機感を煽ってしまい、ゲルトの不安と恐怖感を増幅させてしまいました。
その結果があの悲劇へと繋がったわけです。
・第12話、ジョセフとベアトリスの空中戦
初めて地面から離れたカメラワークを見せてくれたシーンです。
これまで同様、カメラを横にして全身が見えるようにしたり、動きに緩急をつけて何が起こっているのか分かるように見せるようにしています。
ジョセフが放つムチも、手前、中間、遠方の3つのレイヤーに分けて、2Dのアニメーションでも奥行きを出す画作りを心がけていたそうです。
無口な主人公 ジョセフ
ジョセフは、自分から言い訳や説得などをしない主人公です。
その結果誤解されても、自分が傷つくだけならいいという生き方のキャラです。
高倉健みたいに、不器用っぽいけど男らしさがにじみ出てくるキャラにしたかった・・・というのが板野監督の考え。
ここで一言しゃべれば済むのにというところでも、脚本家にはあえて抑えてもらって、しゃべらせなかったそうです。
視聴者が分からなければならないことは分からせてあげて、それ以外のことはいろいろ想像してほしい。
それがアニメーションを観るときの面白さじゃないだろうか、と板野監督は話していました。
それが原因で誤解されてもいいから、とにかくセリフを減らしたそうです。
3DCGで制作するメリット
TVシリーズでは、1話につき動画がだいたい4000枚だそうです。
その中でメカもキャラもちゃんと動かすのは無理。
CGは枚数換算されないそうですが、だいたい4000~8000枚相当。
そこで、4000枚をほぼすべてキャラに使って、さらにCGを使えば、TVでも8000~12000枚使っているように見えるそうです。
板野監督の考えでは、それが3Dの一番のメリットだそうです。
3Dで枚数を稼げるからキャラの方を減らして楽をしよう・・・なんて考えないところがすごいですね。
3DCGアニメーションの可能性
現状の問題点は、3D班と作画班と演出の連携が取れていないこと。
演出や作画が3Dのことをよく分からないなどの理由で連携がうまく行かないことがあるそうです。
そういうところを直していければ、安定したクオリティーのアニメーションを作り続けられるようになるんじゃないか、と話していました。
視聴者の方へメッセージ
最後は板野監督からのメッセージ。
「ちょっと序盤戦は、見るのがつらいかなって人もちょっと我慢して観ていただいて、6話まで観て、12話まで観れば、ブラスレイターの本当の良さが分かっていただけると思います。
そうしたら、最後まで観る忍耐が培われてるのかなと(笑)。
最後も、期待に沿わせていただいて、切ない話で、うまくまとめて行きたいと思ってますんで、最後までブラスレイターを見届けてあげてください。
よろしくお願いします」
どうやら、ブラスレイターを最後まで観るには忍耐が必要だったようです(^^;
2クール目に入ってから残念なエピソードが増えたのは事実ですが、自分の場合は毎回観るのが楽しみでしたけどね。
DVD Vol.1に収録されていたコメンタリーといい、今回の特典映像といい、板野監督の話はなかなか聴きごたえがありました。
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ラベル:ブラスレイター BLASSREITER