今回もレイコがらみの話です。
やはり、夏目に関係する人の話を軸にストーリーを進めると面白さが増しますね。
ニャンコ先生と一緒にハッサク採りに来た夏目。
誰かの視線を感じてその方向に目をやったとき、そちらから斧が飛んできます。
斧は夏目をかすめてハッサクの木に突き刺さります。
ニャンコ先生 「な、なんだこれはー! 木こりの手からすっぽ抜けたのかぁ!?」
夏目 「いや。見た? 向こうから何かがこれを投げる姿を。あれは、妖怪・・・」
これまでのエピソードとは一変。
なんともらしくないスタートとなりました。
今回は雰囲気的にも、画的にも、ちょっと違います。
妖怪の恐ろしさが垣間見えたり、アニメーションとしての動きが良かったり。
一番違うのは、久しぶりに登場した藤原滋の扱い。
存在感が無くてまったく目立たない人でしたが、夏目の心を溶かす重要な役割を与えられました。
斧飛来事件の翌日。
夏目は家の門の前に落書きを発見します。
ニャンコ先生の話からすると、妖怪がこの家に「来ましたよーのサイン」。
その直後、塔子さんの悲鳴を聞いて駆けつけた夏目は、踏み荒らされた家庭菜園を目にします。
昨日の妖怪がついて来たのか?
その夜。
夏目が寝ていると「見つけた―――見つけた」の声が。
目を覚ました夏目の前には妖怪が迫っていました。
妖怪は逃げ出し、夏目はそれを追います。
1階に降りた夏目は滋と鉢合わせ。
滋は、2階を走り回るような音が気になって起きてきたようです。
夏目の横にいるニャンコ先生に気付いた滋は、ニャンコ先生が走り回っていたのだと一人で納得。
そして呟きます。
「あの時も、猫が迷い込んできただけなのかもしれんな」
滋によれば、昔もこの家で同じようなことがあったそうです。
家にお化けでも憑り付いたのかと思うほど激しかったようですが、近所に住んでいた変わり者の綺麗な女の人が来てから治まったとのこと。
翌日。
滋の話に出てきた女の人はレイコなのではないかと思った夏目は、滋に詳しい話を聞くことにします。
滋 「珍しいな。
君がこういう話に興味を持つなんて。
君は私たちについて何も聞かないからね。
遠慮してるのかな?
居候の身で人様の家のことに踏み込んではならないと」
そんなことはないと否定しようとする夏目の言葉は途中で消えてしまいます。
遠慮しているのは事実なので、否定してしまうと嘘を付くことになってしまうからでしょう。
滋 「踏み込んでもいいんだよ。ここはもう、君の家なんだから」
滋は、うろ覚えの記憶を辿って、当時起こった出来事を話し始めます。
滋がその女の人に出会ったのは小学校低学年の頃。
木の枝にボールが引っかかって困っていたときに突然現れました。
滋は名前も顔もよく覚えていないと言っていましたが、これは明らかにレイコです。
レイコは木の上に向かって「返しなさい!」と一喝します。
すると、ボールが落ちてきました。
妖怪がイタズラしていたようです。
みっともない姿を見られた滋はいったんはレイコに反発しますが、レイコが去ろうとしたときに躊躇いながらありがとうと感謝します。
そこに2人の男子生徒が現れ、レイコに向かって石を投げて来ます。
レイコは、変わり者で、近づくと呪われる存在として疎まれていました。
レイコはとっさに滋が持っていた木の枝を取り、飛んでくる石を打ち返します。
運動能力はかなり高かったようです。
妖怪たちから一目置かれる存在になったのも納得(^^;
男子生徒たちはそれ以上レイコに関わることをやめて退散します。
石を投げつけられたのに笑っているレイコを見た滋は、男子生徒に文句を言いに行こうとしますが、レイコはそれを止めます。
「子供って面白いのもいるのね。まだ人間じゃないみたい」
感情のままに動く滋の行動は妖怪のそれに似ているのでしょうか?
レイコは、誰からも相手にされない自分のために必死になってくれる少年に興味を持ったようです。
それ以来、滋はレイコのことをときどき見かけるようになりました。
高い木を見上げて一人でしゃべっているレイコ。
何かと戦っているみたいに嬉々としてホウキを振り回しているレイコ。
やがて滋は、いつも一人でいるレイコに声をかけるようになります。
「あたしと話してると、仲間はずれにされるわよ」
「へーんだ。オレは友達多いから、そんなことにはならないさ」
「―――もう、子供って本当に無神経ね」
そう言って笑うレイコ。
滋はレイコが「怖い存在」ではないと分かり始めます。
そしてレイコは、自分のことを恐れずに普通に話しかけてくる滋のことを気に入ります。
そんなある日、滋の家で変なことが起こり始めました。
門の前に変な落書きが残されていたり、庭が荒らされたり、窓ガラスが割れたり、何かが走り回る音がしたり・・・。
やがて、母が病気になって、父はケガをすることに。
まるで呪われたように悪いことが続きます。
この話を聞いたレイコは、原因は妖怪だろうと察し、滋の家に遊びに行くことに。
滋の両親が不在のときを見計らって滋の家を訪れたレイコは、一瞬でその家のことが気に入ります。
素敵な家。
温かい、優しい家。
こんな所に住めたらきっと幸せ。
「こんなお家が荒らされるのは、不愉快だわ」
麦茶を取りに行った滋が戻ってみると、レイコがいなくなっていました。
2階からは物音が聞こえてきます。
2階に行った滋がレイコがいると思われる部屋の障子を開けようとすると、突然悲鳴が。
それに続いて周囲が眩いばかりの光に包まれ、障子や窓が吹き飛びました。
茂は気を失います。
完全に気を失う寸前、滋が見たのは、舞い散る半紙と、部屋の真ん中で正座しているレイコでした。
「ごめんね、お部屋、少し壊れちゃったわ。
あたしのせいで怒られちゃうわね。
ありがとう。
楽しかったわ」
どう控えめに見ても「少し」ではないと思うのですが(^^;
滋が目を覚ましたのは夜。
レイコはいなくなり、自分は布団に寝ていました。
そして、その日を境に家で起こる変なことは治まったそうです。
それ以後、レイコとはめったに会わなくなり、たまに見かけても、レイコは笑って逃げていくようになりました。
それがなぜなのか、滋には理解できません。
ただわかっているのは、レイコは変わった人だったけれども、優しい人だった気がするということ。
夏目 『レイコさん、滋さんのために妖怪を追い払ったんだ』
滋の話を聞いた日の夕方。
部屋でくつろぐ夏目とニャンコ先生。
ニャンコ先生 「気まぐれな女だなレイコは。滋をかまったかと思えば、急に疎遠になったり」
夏目 「かまいたいけど、かまえなくなる時だってあるさ」
ニャンコ先生 「人間は面倒だな。お前も、レイコも。
―――そうか、この家にはレイコも来たことがあったか」
夏目は突然、ニャンコ先生の頭をなで始めます。
自分のそばにいつもいてくれる大切な存在に感謝しているのでしょうか?
いつかニャンコ先生とも別れなければならなくなることを想って、無性に愛しくなったのかもしれません。
そのとき、妖怪が部屋の前を走り過ぎていきます。
前よりも少し大きくなったようです。
ニャンコ先生 「もしレイコが払った妖し物が舞い戻ったとしたら、これからも不幸が続くぞ。
塔子が病気になり、滋がケガをする」
夏目はこの家を守るため必死で妖怪を追います。
廊下の角を曲がったとき、夏目が目にしたのは、待ち伏せていた妖怪。
一方、ニャンコ先生も少し遅れて夏目を追います。
廊下の角を曲がったとき、ニャンコ先生が目にしたのは、なんと妖怪に喰われる夏目(^^;
このとき夏目は、妖怪の記憶を垣間見ます。
この妖怪がレイコに払われたときの記憶。
その記憶の中でレイコは妖怪と対峙していました。
「さあ出て行きなさい。
荒らすことは許さない。
ここはあたしの―――お気に入りの子の家なんだから」
夏目は、完全に喰われる前にニャンコ先生に救出されて部屋に逃げ込みます。
ニャンコ先生 「あいつはカリメという妖し物だ。
気に入った家の者に災いをもたらして追い出し、自分が住み着く。
しかしレイコに追い出され、偶然見かけたお前をレイコだと思って復讐に来たんだろう」
カリメは夏目の力を吸い取ってさらに大きくなりました。
早く払わないと、この家も、藤原夫妻も大変なことになってしまいます。
実際、このとき1階では塔子さんが頭痛で苦しみ出していました。
夏目は、カリメの記憶の中で見たレイコと同じように、今度は自分がこの家を守る決心をします。
ニャンコ先生 「しくじったら今度こそ喰われるぞ」
夏目を追うカリメは、ついに夏目がいる部屋を探し出します。
障子を開けて中に入ってくるカリメ。
部屋の中では、「出口」と書かれた陣の中で夏目が正座していました。
「この家の人を苦しめるなら、出て行ってもらう」
カリメが陣の中に足を踏み入れると光があふれ出し、カリメは陣の中に吸い込まれていきます。
窓や障子が吹き飛ばされ、部屋は何十年ぶりかの大惨事。
「やったか? 守れた。この家を。塔子さんと滋さんを」
『こんな所に住めたら、きっと幸せね』
「はい。レイコさん」
記憶の中の声に応える夏目。
一息ついたとき、夏目は部屋の惨状に気付きます。
ニャンコ先生 「この惨状でやり逃げとは、レイコは本当にろくでもない女だ」
夏目 「いや、ここは“私のお気に入りの子の家”だったんだってさ」
そう言った夏目は、心の中で呟きます。
『でもレイコさん、普通はそういうのは“私の友達のうち”って言うんだよ』
ここの会話もちょっと面白いですね。
ニャンコ先生の、当事者の心理状態を考慮しないで、状況と行動が1対1で対応していると思っているかのような言葉。
単にレイコに偏見を持っているだけかもしれませんが(^^;
夏目の、何か理由があったからレイコは消えたのだと考える柔軟さ。
自分の感情に素直な妖怪と、他人とのしがらみで動きが制限される人間との違いが出ているような気がします。
変わり者のレイコですら、しがらみから完全に解放されていなかったこともわかります。
そこに滋がやってきます。
そして、目の前の光景に驚きます。
「これは、どうしたんだ」
「な、なんでもないんです」
「これじゃあまるで、あの時と・・・」
「オレが――オレがふざけすぎてしまって・・・」
何度も謝りながら、弁償すると言う夏目。
このとき夏目は気付きます。
『嘘をつくのか、この人たちに。
それが嫌でレイコさんは、もう会いに来なくなったのか――。
また、一人になったのか』
言葉をなくしてしまった夏目に滋が優しく微笑みます。
「貴志、弁償はしなくていい。ここは君の家だと言っただろ」
そう言って夏目の頭に手をやる滋。
『オレは、返せるだろうか。この喜びをどうやって返してゆけるだろうか。大切な、この人たちに』
このとき夏目は、自分がニャンコ先生の頭をなでたときの想いと同じような理由から滋が自分の頭をなでてくれているのかもしれないと考えたのかもしれません。
藤原夫妻にとって自分がどういう存在なのかに改めて気付いたのかもしれません。
次回以降、藤原夫妻に対する態度が変わって・・・・・・こないんでしょうね(^^;
夏目が変わるのはこの物語の終わりまで持ち越しでしょうか?
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ラベル:続 夏目友人帳 「夏目友人帳」シリーズ