でもここでちょっと一休みして過去の名作を振り返ってみようかな、というこのコーナー。
第27回は『夏色キセキ』です。



神奈川では2012年4月から金曜日の深夜にTBSで全12話が放送されました。
その後発売されたDVDの第7巻には、アフターストーリーとして「15回目のナツヤスミ」という短編の特典映像が収録されていて、主人公たちの4年後の姿が描かれています。
当時のキャッチコピーは
四人だけの秘密は、夏色の空に溶けたキセキ
でした。
中学2年生の女の子4人の日常をベースに、御石様(おいしさま)がもたらす奇跡というファンタジー要素を加えて毎回楽しく、ときには感動的なエピソードが繰り広げられます。
声優ユニットのスフィアを主役にすることを前提に制作されていて、メインキャラ4人にはスフィアメンバーそれぞれの性格が反映されているのも本作の特徴の一つです。
そのためもあってか、人物描写の面で手抜きがなく、各キャラの心情がしっかり描かれているので、物語としての見応えが増しています。
また、舞台は静岡県下田市で、実際の地名や名所も多く登場し、ご当地アニメの側面もあります。
下田を出て八丈島に行くエピソードもあり、これは脚本家の手腕が存分に発揮された素晴らしいエピソードでした。
最終話の落としどころもうまくて、メインキャラ4人が奇跡に頼る非現実的な毎日から卒業し、「いつまでも友達でいよう」というしっかり地に足の着いた希望を胸に新たな一歩を踏み出していく様子は、彼女たちが精神的に成長したことをはっきり示してくれる感動的な締め方でした。
スフィアが主演ということで、放送当時は先入観から否定的な見方をする人が多かったようで、第1話開始時点でメインキャラのうちの2人が喧嘩していることも不評だったようです。
ですが、物語の導入としては別段不自然なことはなく、中の人に関係なく物語を楽しめる人であれば、なかなかの良作と感じられるのではないでしょうか。
この導入がどうしても気になる場合は、『夏色キセキ』コミックス第1巻を読むといいかもしれません。
この巻は全7話収録で1~5話でアニメの前日譚が描かれています。
残りの2話はアニメの第1話に相当する話で、アニメとの整合性もとれているので、アニメの導入に唐突感を感じた人はすっきりすると思います。
ストーリーとは関係ありませんが、夕暮れの空の色や高彩度の回想シーンに見られる色使いが独特で、個人的にはこの点が最後まで気になりました。
回想シーンで低彩度と高彩度を使い分けているのは、中学2年生の少女たちにとって思い出は色鮮やかによみがえるものだということを表現するためかとも思いましたが、第11話の一番重要な回想シーンが低彩度だったりして一貫性がなく、どういう意図で低彩度と高彩度を使い分けたのかいまいち腑に落ちませんでした。
とまあちょっと気になる部分はあるものの、ストーリーとキャラの魅力は文句なく素晴らしく、トータルではとても見ごたえのある作品だと思います。
また、アニメ終了後に「夏色キセキフェスティバル」が開催されました。
「夏色キセキ」の楽曲と、スフィアが作中キャラになりきって演じる朗読劇を組み合わせたステージで、アニメ最終話で各キャラがどういう心境だったのかをさらに深く知ることができます。
この様子が「ほぼフル尺」(水島監督談)で収められた特典ディスクがDVD最終巻に付属するので、もし機会があれば視聴することをお勧めします。
アニメ本編が気に入った方ならきっと感動できると思います。
ということで、今回はここまで。
それではまた、次回をお楽しみに。
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