彼は、子供の教育を母親にまかせ、仕事が忙しいことを理由に家庭を顧みない人。
その「異常」さを敏感に感じ取った息子の雄太(第6話「フレンズ」の患者)は、他者とのつながりを求めてケータイ中毒になり、それに一人で対応しなければならない母親も精神を病んでいくことになります。
津田英雄の家庭は崩壊に向かって突き進んでいました。
ある日廊下で津田英雄とすれ違った伊良部は、瞬時に彼の異常を感じ取ったようです。
伊良部は、息子のケータイ中毒について相談するために診察室を訪れた彼の回復に力を貸すことになります。
ということで、今回は最終回。
最終回にしていくつかはっきりしたことがあります。
それは、伊良部がただの変態じゃなくて、精神科医として一番大切なことをしっかり自覚している名医だったこと。
なんと彼は伊良部総合病院の副理事だったということもわかりましたが、それは些細なことです(^^;
さらに、これまでのエピソードで毎回意味ありげに飛び回っていたカナリアの正体についても明かされました。
ラスト近くで伊良部(あるいは津田英雄の無意識下の心)は、津田英雄に次のように話しかけます。
「あなたは気が付かなきゃいけないね
周りにいるすべてのカナリアの声にね
カナリアは、周りがちょっとおかしくなったときに真っ先に知らせてくれる英雄なんだ
だからこそ気が付かなきゃいけないんだよね
僕ら
みんなね」
もちろんこのカナリアは実体として存在するわけではなく、患者が病んでいることを示すメタファーの一種です。
伊良部はこのカナリアの存在を敏感に感じ取ることができるようです。
患者にビタミン剤を注射する行為も、もしかするとこのカナリアが死なないようにするために必要だからなのかもしれません。
本当にビタミン剤だったかどうかはかなり怪しいですが(^^;
津田英雄が診察室にやってきたとき、伊良部はこう言います。
「こういう患者じゃない普通の人が一番厄介なんだよね」
これまでは、診察室に患者が入ってきたときにカナリアが飛び回っていましたが、津田英雄が入ってきたときは飛んでいませんでした。
その代わり、ところどころでカナリアの鳴き声だけが聞こえます。
津田英雄にとってのカナリアは息子の雄太だったようなので、この鳴き声は遠くにいる雄太の心の叫びだったのかもしれません。
伊良部が言う普通の人とは、彼のように症状を自覚していない(カナリアを伴わない)人のことで、そのために自分の症状に気付かせることから始めなければならないから厄介だと言っているのでしょうか。
津田英雄の症状は悪化の一途を辿っていましたが、最後の最後にカナリアの声に気付くことができました。
これにより、雄太も完全に回復することができ、津田英雄の家庭の崩壊も避けられました。
蛇足ですが、今回のエピソードは、星山純一(第3話「恋愛小説家」の患者)が家族の崩壊と再生をテーマに書いた『あした』という本のストーリーに繋がるのかもしれません。
今回で『空中ブランコ』は最終回ですが、終わってみれば最初の印象と180度違うなかなか良い作品でした。
最後に、各キャラの動きを時系列にまとめてみました。
キャストの下に書いたので、興味のある方はこの下にある[脚本・キャストなど >>]をクリックしてみてください(むちゃくちゃ長いです)。
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ラベル:空中ブランコ