今回は、近藤が自分のためにつらい思いをして羅刹にまでなってしまった土方や新選組隊士たちを救うために自らを犠牲にする話。
土方は、これまで近藤のためと信じてとってきた行動が逆に近藤を苦しめていたことを知るとともに、近藤の命と引き換えに自分が延命したことに苦しみます。
互いを思いやる気持ちが最悪の結果につながってしまうという皮肉な展開です。
さらに、羅刹に重大な欠陥があることも判明しました。
羅刹の力を使うことと引き換えに寿命が短くなり、力を使いすぎると灰になって果ててしまうという欠陥。
この事実を天霧から聞かされた斎藤はさっそく土方に報告しました。
土方は羅刹隊の増強を即刻中止するよう山南に命じます。
これに納得できない山南は、原田や永倉が離隊した今、羅刹隊の増強は急務であると反論。
欠陥を克服するための研究も進めるべきだと主張します。
山南の言うことは正論なので言葉で納得させることはできないと判断した土方は、ついに副長命令という最終手段で山南を黙らせてしまいました。
次に土方は、今後の新選組の行動について話します。
徳川慶喜(よしのぶ)公が寛永寺に謹慎させられたため江戸での活動ができなくなったので、江戸で隊士を募って体勢を立て直してから松平容保(かたもり)公のお膝元、会津に陣を移すことになりました。
羅刹隊の存在を秘匿するため、羅刹隊は先に会津に向かわせます。
土方の話はここまで。
解散して土方と二人きりになった千鶴は土方に頼みます。
もう羅刹の力は使わないでほしいと。
千鶴は土方が自分をかばうために羅刹になってしまったと思い責任を感じていました。
そんな千鶴に土方は、羅刹になったのは自らの意志だと言って千鶴の罪悪感を取り除こうとします。
「土方さんがそうおっしゃるから、余計につらくなってしまうんです。羅刹になんてなりたくなかったって、本当の気持ちを言ってください」
千鶴の率直な物言いに土方は負けてしまいます。
千鶴の口ぶりは土方の姉のものに似ているので、身内に叱られているようで言うことを聞かなければならない気にさせられるそうです。
羅刹の力は使わないと言って、とりあえず千鶴を安心させました。
そのとき土方は吸血衝動の発作に襲われます。
千鶴は自分の指を切って血を与えようとしますが、土方はそれを止めて千鶴を部屋から追い出しました。
千鶴は障子越しに土方が苦しむ声を聞き心を痛めます。
そして、土方の苦しみを知ってつらい思いを抱える人物がもう一人。
近藤です。
廊下の角に身を隠して土方と千鶴のやり取りを聞いていました。
近藤はまた、先ほどの羅刹の欠陥についての話も聞いてしまっています。
結局土方は、以前に藤堂からもらった薬で吸血衝動を抑えます。
これまでは強い精神力で抑えてきたのに、ついに薬に頼らなければならなくなったようです。
慶応4年4月2日。
新選組は下総流山の造り酒屋・長岡屋へ陣を移しました。
斎藤は集まった新兵を訓練するために別行動をとっています。
千鶴がいつものように近藤の部屋にお茶を持っていくと、近藤は読書中でした。
机の上には三国志演義、清正記、水滸伝などが無造作に並んでいます。
近藤は千鶴に向かって話し始めます。
子供の頃は関聖帝君(かんせいていくん)のような立派な武将になって誰かのために戦いたいと思っていたと。
先日の甲府城での負け戦を想いながら、望むだけでは名将にはなれないと気付くのが遅すぎたと後悔の念を口にします。
千鶴にこんなことを愚痴ってしまうくらい、相当落ち込んでいるようです。
そのとき土方と島田が慌ててやってきました。
二人は、長岡屋の周りに200~300人の官軍が集まっていると報告します。
多くの隊士は斎藤と一緒に訓練中で、ここに残っているのはごくわずか。
戦いを避けて逃げるしかありません。
土方は自分一人でなんとかするから全員で逃げるよう島田に指示し、さっそく飛び出していこうとします。
そんな土方を千鶴と島田が止めます。
さらに、これまで黙っていた近藤が動きました。
自分が官軍の本陣に行って時間を稼ぐからその間に逃げてほしいと言い出します。
新選組の名前を出さずに、この辺りを警備している鎮圧部隊だと言えば、土方たちが逃げるまでの時間稼ぎくらいできると。
土方は、そんな話はすぐにばれると猛反対です。
それでも近藤は、ばれたとしても自分は大名の位を持っているので簡単には殺されないと言って土方を安心させようとします。
土方が言うように、旧幕府からもらった身分など官軍にとっては意味がないことなど承知しているはずです。
近藤は死を覚悟しています。
土方は自分なら心臓を貫かれない限り死なないから、時間稼ぎなら自分のほうが適任だと言って近藤の考えを変えさせようとしますが、近藤は引こうとしません。
そしてついに、近藤は局長として土方に命令します。
「ならばこれは命令だ!土方副長、駐留している隊士たちを率い、市川の部隊と合流せよ」
局長の命令は絶対です。
土方は近藤が自分に命令しているという事実にショックを受けてしまいます。
近藤はさらに、敵が押し入ってくる前にここから逃げるよう島田にも指示しました。
島田はしばしためらいますが、近藤の決意を察してこの指示に従います。
土方も一緒に来るよう促して逃げようとします。
それでも動こうとしない土方に近藤は言います。
「なあ、歳。そろそろ楽にさせてくれ。俺を担ぎ上げるためにあちこち走り回って、しまいには羅刹にまでなって。そんなお前を見てるのはつらいんだ」
「俺は――。俺のしてきたことが、あんたを苦しめてたのか?侍になって、お上に仕えて、そうすりゃあんたが一緒に喜んでくれると思って、俺は――」
「すまん。お前をそこまで追い詰めたのは俺だ」
ここまで言われてしまっては近藤に従うしかありません。
土方は最後にもう一度だけ確認します。
近藤を残して自分が逃げることが近藤の望みであることを。
そして島田に逃走経路を確保するよう指示してから、自分も撤退の準備を進めるため部屋から出ていきます。
千鶴はひとまず部屋に残りました。
誰もいなくなったところで近藤が千鶴にお金を渡します。
千鶴の逃亡資金です。
新選組と一緒にいては危険なので、千鶴を一人で逃がそうとします。
土方にはうまく伝えておくから今すぐここを離れるよう千鶴に促します。
でも千鶴はこれを拒否し、はっきりと自分の意志を伝えました。
「私は土方さんとともに行きます」
その眼には一点の曇りもありません。
そして今度は千鶴が近藤を誘います。
一緒に逃げようと。
それが土方や島田の望みでもあると。
当然ながら近藤ははっきりとこれを拒絶しました。
もし自分が逃げると言えば、土方が羅刹になって戦うことは明白だからです。
そうなれば土方の寿命が縮んでしまいます。
「あいつの命と引き換えに今の俺が生き延びるわけにはいかん」
近藤は、自分ができる最後のことをしようとしています。
おとりになってみんなを逃がすことです。
「雪村くん。歳のことをよろしく頼む」
近藤は頭を下げて千鶴に頼みました。
そしていよいよ長岡屋から逃げる時がやってきます。
まずは島田とほかの隊士たちを先に行かせ、土方と千鶴は少し遅れて出ていきました。
やがて土方と千鶴は島田たちに追いつきます。
でも運の悪いことに島田たちは官軍に見つかって足止めされていました。
土方は即座に飛び込んで2人の官軍兵を倒します。
でもすぐに別の敵が小高い丘の上に現れてしまいました。
今度は数十人規模です。
土方はこの場は自分一人で対応すると言って、島田たちを先に逃がします。
そして千鶴の目の前で羅刹化して敵の中に飛び込んでいきました。
銃弾を受けてもひるむことなく、数十人の官軍兵を次々に倒していきます。
しばらくして千鶴が丘の上に行ってみると、そこには官軍兵の死体が累累と横たわっていました。
その中に一人立つ土方。
土方は島田たちが逃げ切れたかどうか千鶴に確認し、千鶴もすぐに逃げるよう命令します。
でも千鶴は土方の言葉を聞きません。
「すみません。その命令は聞けません―――邪魔にならないようにします。だから、今はそばにいさせてください」
この言葉を聞いて緊張の糸が切れてしまったのか、土方は自分のやるせない想いを口にし始めました。
「俺は、何のためにここまでやって来たんだろうな。あんなところで近藤さんを敵に譲り渡すためか?あの人を押し上げて関聖帝君や清正公どころじゃねえ本物の武将にしてやりたかった。片田舎の貧乏道場の主と農民の子でどこまで行けるのか試してみたかった。俺たちは同じ夢を見てたはずだ。なのに、どうして俺はここにいるんだ?近藤さんを置き去りにして、どうしててめえだけ助かってるんだよ!絶対見捨てちゃいけねえ相手を見捨てて、てめえだけ生き残って!」
「土方さんが近藤さんのことを想っているように、近藤さんも土方さんに死んでほしくなくて、もっともっと生きてほしくて、だから、どうしてもああならざるを得なかったんだと思います」
その頃、近藤は官軍に投降していました。
近藤の顔には後悔の念のかけらもありません。
なにも思い残すことがないかのような清々しい顔です。
やがて近藤は、指揮官らしき人の前まで連れてこられました。
近藤を見た兵士の一人が指揮官に耳打ちします。
おそらく彼は近藤が新選組の局長だと知っていたのでしょう。
史実どおり、近藤の余命も残すところわずかのようです。
ということで今回はここまで。
時代の流れに翻弄されて破滅へ向かうしかない男たちの想いがせつなすぎます。
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